サバ(雌)。太平洋に浮かぶ小さな島で生まれる。上京後、コギャル系ローマ人を経てVIPPERへ。英語コンサルタントの顔も持つ。"qちゃん"という子猫を飼っている。 趣味は自作自演。japanese_sabaアットlive.jp


by kyonkoenglish

高慢ちきな女。
自己顕示欲が強く、自意識過剰で、人一倍嫉妬心が強い。
そんな自分を偽る女。


少女の頃、嫌悪していた女が、窓ガラスに映っている。
耐え切れずに目をそらす。

こんな女に、あの人も会いたくはなかったに違いない。
今朝、東京駅のホームに「のぞみ」が止まって、扉が開き、真っ赤な旅行カバンを持ち上げかけたその瞬間に、私はそう悟った。目の前で、「のぞみ」が動き出し、加速していくのを見送ってから、ゆっくりと携帯電話を取り出した。ごめんなさい。今日は行けなくなりました。もっと、暖かくなったら。春になったら、会いましょう。

その春は、きっと来ないだろう。
家を出たときは降っていなかった雪が、次第に強くなってきて、タクシーを止めようと手を挙げる私を、遠慮なく叩いた。タクシーはどれも「賃走」の文字を見せて私を馬鹿にするように通り過ぎていく。旅行カバンの赤の上に、まばらな白が積もっていく。

うきうきと荷造りをして、さっき出てきたばかりの自分の部屋に戻ると、あのときの華やいだ気持ちが部屋に充満していて吐き気がした。大きく窓を空けて外の冷たい空気を吸い込む。まったく、いい年をして。何を期待していたんだろう。

赤いカバンを開け、一番上に大事にのせてある銀色の袋を取り出す。ピエール・マルコリーニを選んだのは、ベルギーのある町で食べた、この世のものとは思えないほど美味しかったチョコレートと味が似ているからだ。シャンパントリュフを食べてもらいながら、あの町――ブルージュの話、塔から見下ろした赤い屋根の街並み、ウサギの煮込みがとてもおいしかった話をしようと思っていた。あの人は、きっと笑いながら聞いてくれただろう。いつか一緒に行こうねと、言ってくれただろう。

ゆっくりと、箱を開ける。トリュフを一つつまんで食べる。甘酸っぱいオレンジリキュールの香りが口いっぱいに広がる。もう一つ。チョコを食べながら、涙が溢れていた。何の涙なんだろう。二度と行かないであろう、ブルージュの街。乗れなかった新幹線。

ふと見ると、部屋に据え付けてある全身鏡に、泣きながらチョコを頬張る惨めな女の姿が映っていた。

私は鏡から目をそらす。このままずっと、目をそらし続ける。皆だって、そうでしょう、チョコレートだって、そのためにあるんでしょう。
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by kyonkoenglish | 2008-02-09 23:57