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サバ(雌)。太平洋に浮かぶ小さな島で生まれる。上京後、コギャル系ローマ人を経てVIPPERへ。英語コンサルタントの顔も持つ。"qちゃん"という子猫を飼っている。 趣味は自作自演。japanese_sabaアットlive.jp


by kyonkoenglish

『手』(1)

「あの・・・手をつないでも良いかな」

10センチほど離れて歩きながら、遠慮がちに言った瀬川に、

「ざんねーん。お触りは営業外でーす」

と答えたものの、瀬川とだったら手をつないでも良いかもしれない、と絵里は思った。

女子大生の絵里が、好奇心から夜の世界に入って一年半。やってみると意外と面白く、
吉祥寺では一番大きなキャバクラで、常時10位以内をキープしている。
他の女の子たちと比べて、自分がそれほど美人でないことは自覚していたが、
はきはきした物言いと、ちょっと気の強そうなところが他の子と違っていて面白い、
と言って指名してくれる客が多かった。

客といっても、様々だ。
「質の良い」客は、頻繁に同伴出勤をしてくれ、かつ手を出してこない客で、滅多にいない。
同伴出勤、とは、女の子が店に出勤する前に
食事や買い物などのデートをして一緒に店に来てくれることを言う。
『同伴』はかなり値が張るが、女の子の成績はぐんと伸びる。
客もそのことを知っているので、女の子のノルマのために同伴してくれる客もいるが、
店を通さないただの「デート」を求めて口説いてくる迷惑な客の方が圧倒的に多かった。

瀬川はかなり質の良い客と言えた。
頻繁とは言えないまでも、週に一度は来てくれるし、
「今月、同伴が足りないの」と泣きつくと今日のように同伴してくれる。
今の客の中では一番と言っても良いかもしれない、と絵里は思う。

今の絵里の成績を支えてくれる「大きい」客は
不動産会社の社長、大病院の院長、老舗のうなぎ屋のオーナーがいて
毎日のように通ってくるが、いずれも下心を持っていることは明らかだった。

不動産会社の社長は、初めて店に来たときに
絵里を大いに気に入ってくれたものの、
翌日秘書から電話がかかってきて「愛人になってやってください」
とあからさまに営業外の関係を求められたのには参った。
うまくあしらったものの、頻繁に通ってきてそのたびに扱いに苦労している。
院長もうなぎ屋も、そこまでひどくはなかったが、あわよくば、
と思って通ってきているのは明らかだった。
by kyonkoenglish | 2007-10-11 20:54