渋谷・マークシティ西口
2008年 01月 26日
マークシティを抜けて、ゴミゴミしたペンシルビルが立ち並ぶ一角、キャバクラの呼び込みもちらほら見える、渋谷の表の顔と裏の顔の境界。何本もはえている細い道の一本をたどっていったビルの二階、飲み屋や焼き鳥屋の看板に遮られるようにしながら、しかしある種の威厳と佇まいをもって、そのバーはある。
小さな階段を上るとどっしりしたドア。ゆっくりと、細く開いて体を入れると、表の喧騒が嘘のような、薄暗い空間とカウンター。長く伸ばした髪をきっと結んだ店長が、細い結び目のネクタイとぴしりとしたスーツで「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。
初めてこの店に足を踏み入れた6年前、店は別の場所にあり、店長はまだ下っ端のバーテンダーで、髪は短かった。ここに足を踏み込むと、店の歴史とともに自分の歴史が、ぼんやりと流れてくる。
そんな思い出を肴にしながら、その日は溜池山王の法律事務所で働く若い弁護士のA氏を待っていた。たまたま溜池山王に用があったので、思い立って電話をしてみたら、来てくれることになったのである。
久しぶりだったので互いの近況や、大学時代の思い出で話が弾む。「もこみち」と呼ばれているイケメンのバーテンダーお得意の「クレオパトラの夢」というカクテルは少し強めで、次第に酔いがまわっていく。
11時をまわった頃、チェックアウトをして外に出ると、夕方より格段に冷たさを増した風が、酔った顔を叩く。
「また、連絡するね」
久しぶりに温まった気持ちを大事に抱えながら家に帰ると、エッセーコンテストの入賞通知が待っていた。表彰式は、奈良県。「欠席」に丸をつけかけて、ふとこれを口実に、京都のあの人に会いにいこうかと思いつき、暫し迷う。外の風は相変わらず冷たいらしく、カーテンを通してもひやりとした感覚がある。慌ててエアコンのスイッチを入れ、静かなモーター音を聴きながら、奈良行きに思いを走らせる。
小さな階段を上るとどっしりしたドア。ゆっくりと、細く開いて体を入れると、表の喧騒が嘘のような、薄暗い空間とカウンター。長く伸ばした髪をきっと結んだ店長が、細い結び目のネクタイとぴしりとしたスーツで「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。
初めてこの店に足を踏み入れた6年前、店は別の場所にあり、店長はまだ下っ端のバーテンダーで、髪は短かった。ここに足を踏み込むと、店の歴史とともに自分の歴史が、ぼんやりと流れてくる。
そんな思い出を肴にしながら、その日は溜池山王の法律事務所で働く若い弁護士のA氏を待っていた。たまたま溜池山王に用があったので、思い立って電話をしてみたら、来てくれることになったのである。
久しぶりだったので互いの近況や、大学時代の思い出で話が弾む。「もこみち」と呼ばれているイケメンのバーテンダーお得意の「クレオパトラの夢」というカクテルは少し強めで、次第に酔いがまわっていく。
11時をまわった頃、チェックアウトをして外に出ると、夕方より格段に冷たさを増した風が、酔った顔を叩く。
「また、連絡するね」
久しぶりに温まった気持ちを大事に抱えながら家に帰ると、エッセーコンテストの入賞通知が待っていた。表彰式は、奈良県。「欠席」に丸をつけかけて、ふとこれを口実に、京都のあの人に会いにいこうかと思いつき、暫し迷う。外の風は相変わらず冷たいらしく、カーテンを通してもひやりとした感覚がある。慌ててエアコンのスイッチを入れ、静かなモーター音を聴きながら、奈良行きに思いを走らせる。
by kyonkoenglish
| 2008-01-26 16:21