サバ(雌)。太平洋に浮かぶ小さな島で生まれる。上京後、コギャル系ローマ人を経てVIPPERへ。英語コンサルタントの顔も持つ。"qちゃん"という子猫を飼っている。 趣味は自作自演。japanese_sabaアットlive.jp


by kyonkoenglish

渋谷・マークシティ西口

マークシティを抜けて、ゴミゴミしたペンシルビルが立ち並ぶ一角、キャバクラの呼び込みもちらほら見える、渋谷の表の顔と裏の顔の境界。何本もはえている細い道の一本をたどっていったビルの二階、飲み屋や焼き鳥屋の看板に遮られるようにしながら、しかしある種の威厳と佇まいをもって、そのバーはある。

小さな階段を上るとどっしりしたドア。ゆっくりと、細く開いて体を入れると、表の喧騒が嘘のような、薄暗い空間とカウンター。長く伸ばした髪をきっと結んだ店長が、細い結び目のネクタイとぴしりとしたスーツで「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。

初めてこの店に足を踏み入れた6年前、店は別の場所にあり、店長はまだ下っ端のバーテンダーで、髪は短かった。ここに足を踏み込むと、店の歴史とともに自分の歴史が、ぼんやりと流れてくる。

そんな思い出を肴にしながら、その日は溜池山王の法律事務所で働く若い弁護士のA氏を待っていた。たまたま溜池山王に用があったので、思い立って電話をしてみたら、来てくれることになったのである。

久しぶりだったので互いの近況や、大学時代の思い出で話が弾む。「もこみち」と呼ばれているイケメンのバーテンダーお得意の「クレオパトラの夢」というカクテルは少し強めで、次第に酔いがまわっていく。

11時をまわった頃、チェックアウトをして外に出ると、夕方より格段に冷たさを増した風が、酔った顔を叩く。

「また、連絡するね」

久しぶりに温まった気持ちを大事に抱えながら家に帰ると、エッセーコンテストの入賞通知が待っていた。表彰式は、奈良県。「欠席」に丸をつけかけて、ふとこれを口実に、京都のあの人に会いにいこうかと思いつき、暫し迷う。外の風は相変わらず冷たいらしく、カーテンを通してもひやりとした感覚がある。慌ててエアコンのスイッチを入れ、静かなモーター音を聴きながら、奈良行きに思いを走らせる。
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by kyonkoenglish | 2008-01-26 16:21