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サバ(雌)。太平洋に浮かぶ小さな島で生まれる。上京後、コギャル系ローマ人を経てVIPPERへ。英語コンサルタントの顔も持つ。"qちゃん"という子猫を飼っている。 趣味は自作自演。japanese_sabaアットlive.jp


by kyonkoenglish

テスノート(下)

シキガミの説明は続いた。

「このノートは、願いを叶えてくれるノートだ。書いたらそれが現実になる」

(・・・まさか。でもデスノートの例もあることだし)

ためしにミチコは「タカシくんとデートできる」と書いた。
その瞬間、ミチコの携帯が鳴った。

「みっちゃん?オレ、なんだか会いたくなっちゃってさ。
カラオケでも行かない?」

「うっそぉ!」ミチコは叫んだ。

「これ本物だわ。私が持ってて良いの?」

「もちろんさ。所有権はキミにある。ただ、注意点が一つ。
 このノートはTest Noteでテスノート、まだ試験中のものなんだ。
 むやみに使うのはお勧めしない」

「わかったわ」

そうは言っても、憧れのタカシくんとデートできるのだ。

「テスノートって最高!」

ミチコはタカシくんとの時間を満喫した。

それからのミチコには、怖いものがなくなった。

「ニキビが消える」
「嫌な授業の先生が休む」

いずれもすぐに叶った。嫌なことはテスノートで消せば良い。
やりたいことは、書けば良い。ミチコは以前と比べられないほど
態度が大きくなり、「最近、使いすぎだぞ」というシキガミの注意も
聞かなくなった。ノートの扱い方もぞんざいになってきた。

ある日、学校から帰ってくると
母が何かを書いている。
「おかえり、みっちゃん。今からお母さん、お買い物に行って来るからね」
「わかっ・・・そのノート!」
「あぁ、お買い物メモの紙がなかったから
 机の上にあったのを借りたの。悪かったかしら」

母親が振り返った先に、娘の姿はなかった。
代わりに、カボチャとキュウリと豚肉とニンジンが転がっていた。
by kyonkoenglish | 2007-10-10 11:17